闇金・詐欺業者はこう騙す

漂流する主婦 AtoZ 借金難民500万人の衝撃

2011年2月22日

闇金がらみでNHKで放送されていた内容について紹介します。

改正された、「改正貸金業法」により、急にお金借りられなくなった人が増えています。

通常、消費者金融カードやクレジットカードなどを利用する場合、きちんと返済さえしていれば、また同じように借りることができます。しかし、改正貸金業法により、収入に対して一定額以上の借り入れがある場合、追加での借り入れが出来なくなりました。

そのため借り入れができず、夫にも相談できずに苦しんでいる主婦が数多くいます。
以下、そのような番組の内容となります。

 

生活費が借りられない主婦の悲鳴

Aさんの場合、
夫の年収は400万円代、Aさん自身も病気がちで働けず、貯金をする余裕がありませんでした。そのため、子供の夏期講習など、急な出費の際には夫に内緒で借金をしてしのいできました。

インタビュアー:以下 イ)と略

イ)ご主人には話されたんですか?

>知らないです。クレジットカードのキャッシングも知らないです。

イ)それは何でお話にならないんでしょう?

>言いづらいですね。
>私がちゃんと働ければちゃんとできるし、給料をもってくる主人には
>お金が足りないから、借りているとはちょっと言えないです。
>やりくりが悪いんじゃないか、みたいに言われるかな

自分と結婚して貧乏くじを引いたと夫に思われたくない
Aさんは未だに借金のことを言えずにいます。

今、クレジットカード会社には借金ができなくなったというAさんのような主婦の問い合わせが殺到しています。Aさんが利用していたカード会社が取材に応じました。

>今回ですね、貸金業方の改正のために、キャッシングのご利用がいただけない状態になっているんです。申し訳御座いません。

カード会社や消費者金融会社の中では主婦への貸し出しを止めるところも相次いでいます。法律の改正で手続きが煩雑になり、コストに見合わないからです。

イ)貸して欲しいという声には答えられないんですか?

>申し訳御座いませんがお答えできないです。

法律の改正によって借金ができなくなる主婦やサラリーマンの数は業界団体の調査を元に計算するとおよそ500万人に上ると推定されます。

今回の改正で、借金を年収の3分の1に抑えたり、金利の上限を20パーセント以下に下げました。その結果、3年前に比べて多重債務者の数は半減しました。

しかし、その影で主婦が生活費のための借金が出来ないという自体が起きているのです。

借金が出来ない主婦に何が起きているのか?

追跡チームは違法な闇金に手を出したという主婦に出会いました。
人目を避けるように待ち合わせに現れたのは40代のBさんです。

夫と離婚し息子と二人暮らしのBさんは、急な出費の際には街の消費者金融を利用していました。ところが法律の改正で借りられなくなりました。

イ)例えば知り合いとか家族とかに相談するということは

>昔、どうしても生活に困っていくらか借りたことはあったんですけど、そんなんでやっぱり友達もたくさん失いました。だから金銭的なことで友達に相談するのはねぇ。やっぱり友達って、すぐに作れるもんじゃないでしょう

友達を失うぐらいならと、Bさんは頼ったのが闇金でした。
息子が入っている野球チームがユニフォームを新調したことがきっかけでした。

イ)ユニフォームについては我慢しなさいということは

>自分のことは、みすぼらしいというか惨めな思いしてでもいいんですけど、子供に惨めな思いをさせるのだけはできないというか、させたくない

Bさんが闇金業者から借りたのは5万円。この間返したのは利子の9万円だけ。
今も、利子を払い続けるだけで精一杯です。

親や友人達に誰にも相談することなく闇金に走ったBさん。
なぜ犯罪である闇金との一線を簡単に越えてしまうのでしょうか。

取材を進めると、そんな主婦たちの隙間に巧みに入り込む闇金業者の実態が見えてきました。

まずは安心させるのが闇金の手口

追跡チームはBさんが借りていたという闇金業者からある男にたどりつきました。
法律の改正後、主婦相手の闇金を増やしているというこの男。
主婦たちを取り組むためのソフト闇金という手口が広がっています。

主婦の場合、まず相手のことを安心させることが重要だといいます。

>怖がらさんことですかね、始めは。
貸すときに先入観みたいな感じでいきなり怖いって思ってしまったら、お金だけをもらって連絡つかなくなるのが多いんでね。

イ)絶対返せよとか、そんな感じではないんですか?

>そんなん言わないです。金利だけ入れてもらえたらみたいな感じで。
むこうも安心感みたいな感じがあって

闇金業者にとって、もっともつけ込みやすいのが夫との会話が少ない主婦だといいます。

>友達とか旦那のおらん間の、ちょっとしたしゃべり相手か彼氏の間ぐらいのみたいな奴もいましたね。変な話、一緒に住んでたら(夫から)優しい言葉なんてかけてくれないでしょ。普通に主婦生活してて、朝行ってきますって言って、帰ってきて、おうおうおう、みたいな感じの会話でしかないでしょう。そこにぱっと僕が行って大丈夫ですか?って。別に普通の言葉でも向こうからしたら心配してくれてるんだって、すごい勘違いをしてくれるんですね。

闇金というよりも主婦相手のカウンセリングですねと、男は嘘ぶく。
優しい言葉で主婦に近づく闇金
しかしその裏側には犯罪者の影が隠れていました。

取り立ての恐怖

30代のCさんです。出会うなり業者からの取立ての恐怖を怯えながら語り始めました。

>最初、主人が知らないうちは、主人に対して家族に知らせるぞっていうのから始まって、あとは住所、やっぱり知ってますから、子供さんどこの小学校ですよねと言われる。
無事に学校から帰れると思うな、みたいな脅しがあったりとか。やっぱり子供を守らないといけないし、すごく怖かったです。何とか、どうにかできないかなって、ずっとそんなことばっかり思って、携帯が鳴るたびに本当にびくびくして、家の電話も線をきってたりとか抜いてっていう隠れるような感じでしてたので

Cさんはまったく闇金とは気づかずにその罠にはまったと言います。
実家の父親の入院費用を夫に内緒で借りようとしていたCさん
いくつかの消費者金融に断られる中で電話帳(タウンページ)に載っていたある貸金業者の広告が目にとまりました。

>ご来店不要だとか即日振り込みとか、借りやすさっていうのとかも

広告に掲載されていた金利は20%以下。
正規の業者とうたっていました。
Cさんは業者に電話をかけましたが、誰も出ませんでした。
しかしその後、まったく知らない闇金業者から電話がかかってきたのです。

正規の業者に電話をしたはずなのに、なぜ闇金からかかってきたのか。
追跡チームが実際に電話をかけてみると、お客様がおかけになった電話番号は現在使われておりません・・・・。と既に不通に。
さらに、広告に載っていた国の登録番号を調べてみると番号は登録されていませんでした。

客の電話番号を集めるためのダミー広告だったと見られます。
Cさんの元には、連日闇金業者から電話がかかってくるようになりました。

電話1本でお金が振り込まれる便利さに思わず手を出してしまったといいます。

最初の借りたのは5万円。月4万円の利子を払うため別の業者から借り入れました。
利子の返済のため借金を繰り返し、気づいた時には2ヶ月で81万5千円にも膨らんでいました。

そしてCさんが利子さえ払えなくなってしまった瞬間、家族を巻き込んだ執拗な脅しや嫌がらせが始まったのです。Cさんは極限まで追い込まれたのです。

>自分がこの家からっていうか、いなくなればこんな取立ても主人のほうとか家族にも行かないんじゃないかって、すごく考えて、最悪のこともずっと考えました。

わずかな借金が、あっという間に膨れ上がる闇金の借金地獄。その先に主婦に待ち受けているものはなんなのか

闇金の回収手口

関西で5つの闇金業者を束ねているという人物に接触しました。
携帯を手に現れたのはスーツに身を包んだ60前後の男です。
借金を払えなくなった主婦からどう回収するのか、男はその手口を語りました

>スタイルのいい人はね、風俗へ働きにいくことが可能だと考えるわけですよ。
風俗へ行ったら返せますから。

さらに犯罪にまで手を染めさせるケースもあるといいます

>離婚したような形にとってね、2人くらい子供いたら(生活保護などで)25万以上もらえますから、そういう擬似犯罪、犯罪に近いようなことが増えるやろね。

この他にも保険金詐欺や、クレジットカードを使った詐欺など主婦に犯罪をけしかけるというのです。
さらに男は、主婦からとりはぐれがないように、ある紙を書かせるというのです。

>これです。この裏ありますよね。これが家族構成(親兄弟等の連絡先も書かされる)。ここが一番大事なんですよ。何かが起こった時にはここを頼りに探しますから。
せやから確認は絶対に取るんですよ。ここは。

家族の情報を握られた主婦は逃げることができなくなるといいます。

イ)(違法に高い金利の)お金を返せなくなって、かわいそうだとは思わないんですか? 良心は痛まないんですか?

>良心って、何の良心がいります?
サラ金があかんようになったわけでしょ、表向きの街金が。
せやから借りられへんわけですやん。即貸してくれる所というのはやっぱり闇金屋さんしかないでしょ。

借金地獄に陥る人を助けようと改正された貸金業法
法律の改正によって借金できなくなった主婦が闇金にまで手を出している現状を国はどう捕らえているのか。

金融庁ではこの問題をどう捉えているのか

監督官庁である金融庁をたずねました。

イ)これまで消費者金融を利用していた主婦たちが借りられなくなっているケースが増えているという、そういった指摘があるのですがその点についてはどのようなご認識でしょうか

>どうしても今回の問題は、もともと多重債務者の方が大量にでて、ようするにもう借金を返せないくらいになってしまったと。
それが社会問題化して、ま、これを規制していこうと出来た法律です。
ですから、どうしてもおっしゃるように中にはですね、返済能力はあるんですけども、やはり収入の3分の1で切ってしまいますんで、ここで借りられなく人が出てくると。

今の状態で満足しているわけではないんですけども、とりあえず決定打ではないわけですよね。そういう中で出来るだけオプションを増やしていかなければいけないし、消費者金融でも配偶者の同意があれば借りれるわけですから

イ)夫の同意があればいいんでしょうけども、同意がない場合借りにくくなってしまってですね。そういう主婦が場合によっては違法な闇金を利用するというこういった実態もあるわけですが、それについてはどうお考えですか?

>そういう話はありますけども、一方では闇金の実態というのが非常にわかりずらい。
闇金というのは非常に違法な高金利で返済を迫るわけでして、そういったものを利用しないためにも相談窓口を用意しておりますし、もうひとつはセーフティネットということで、社会福祉協議会の低金利を用意しております。

低金利等のセーフティネットの準備

社会福祉協議会というのは、低所得世帯や失業者などを対象に低金利で融資を行うところです。また審査があり、実際に借りられる場合でも、早くて4日かかります。
取材した主婦たちは、そもそもこの制度を知りませんでした。

イ)今仰った社会福祉協議会の貸付制度についてもですね、借りる場合に審査とかあって、つまり、すぐに必要という方のニーズにこたえられていないこともあると思うのですが

>完全だとは思いませんし、当然そういう実態に制度がついていっていない。
それは否定をしません。
そこをどう埋めていくかっているのが私どもさらにやっていかなくちゃいけないことだと思っています。

生活の為の借金が出来なくなった人を救うために国はセーフティネットの整備を急がなければなりません。
その一方で、取材を通じて気になっていることがありました。
主婦からの闇金相談が相次いでいる司法書士事務所です。

闇金の被害にあっても周囲に相談すらできない主婦たち。
見えてきたのは孤立する主婦たちの危うい現状でした。

イ)闇金のほうが気が楽だったということですか?

>そうですね。なんの絡みもないんで支払いさえ滞らなければ誰にも迷惑をかけないというか

別の主婦
>(家族は)借金のことも知らないですし、言う必要もないと思ってますし、苦労をさせてるとか思わせたくないので、一般の家庭と同じに見せたいので

さらに別の主婦
>闇金があるってことも悪いとは思うんですけど、相談するところも無かったというか・・・・

ささやかな家庭を維持するために闇金に手をだすことをためらわない主婦たち。
夫にも家族にも助けて!と言えず、主婦たちは孤独に漂流している、こんな社会が垣間見えた気がします。

 

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